しっくり

玉乃井という元旅館に棲みつき、活動を行っている。
独自の重力や時間の流れ、包容力が混在する不思議なこの空間でいろんな人を迎えていると、その人の表情や声色で、この空間と呼応しているというのがなんとなくわかる。
「なんかすごい」という声が漏れる。そんなつたない言葉が一番それを表している。
先日から玉乃井に滞在している彼の姿を台所でみたとき、数日目とは思えないしっくり感があった。
それは、関わってきた時間の長さによるものではなく、その人が生きてきた過程が滲ませるものと、空間に蓄積してきたものが呼応しているさま。関係性というのは、出会う前から始まっている。
わたしは、最初から玉乃井にしっくりきていたわけではなかった。ほかに場所もなかったので、まず実験的にここでやってみようという程度だった。次第に、「なんかすごい」が体に馴染んでいき、元いた部屋が手狭になって今の部屋に移動したとき、「ここだ」と、しっくりきて、棲みついている。
自分にしっくりくるものを見つけること。
蛸壺化せず、交わり、変容と蓄積を続けること。
そうやって流れていけたらいい。


