しっくり

撮影・リソグラフ印刷:野尻 暉(enden press)

玉乃井という元旅館に棲みつき、活動を行っている。

独自の重力や時間の流れ、包容力が混在する不思議なこの空間でいろんな人を迎えていると、その人の表情や声色で、この空間と呼応しているというのがなんとなくわかる。

「なんかすごい」という声が漏れる。そんなつたない言葉が一番それを表している。

先日から玉乃井に滞在している彼の姿を台所でみたとき、数日目とは思えないしっくり感があった。

それは、関わってきた時間の長さによるものではなく、その人が生きてきた過程が滲ませるものと、空間に蓄積してきたものが呼応しているさま。関係性というのは、出会う前から始まっている。

わたしは、最初から玉乃井にしっくりきていたわけではなかった。ほかに場所もなかったので、まず実験的にここでやってみようという程度だった。次第に、「なんかすごい」が体に馴染んでいき、元いた部屋が手狭になって今の部屋に移動したとき、「ここだ」と、しっくりきて、棲みついている。

自分にしっくりくるものを見つけること。

蛸壺化せず、交わり、変容と蓄積を続けること。

そうやって流れていけたらいい。

この記事を書いた人

野尻 暉のアバター 野尻 暉 enden press / enden books店主

宮崎県出身、福岡県津屋崎在住。

旧玉乃井旅館の一室で、リソグラフスタジオ「enden press」と書店「enden books」を営むほか、編集、出版、リソグラフを用いた作品制作などをおこなう。

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